アクターズマスタークラス(AMC)・チェミンシク編
マスタークラスは2004年から始まった、映画製作を学ぶあるいはそれにたずさわる人たちを対象に、その道のエキスパートを招いてその話を聞く学術プログラムです。3回目の今回は俳優をフィーチャーし、韓国からチェミンシク、日本からは竹中直人という2人の名優を招いて2日間に渡って演技についてのクラスがありました。私は役者志望の学生ではないのですが、映画を愛する人ならだれでも参加できるというので、参加してきました。まずはそのレポートからです。
11時から始まったクラスはコーディネーターのイヨンランの講義から始まりました。女優でキョンヒ大学教授のイヨンランは「ブラザーフッド」のお母さん役でおなじみです。実際の彼女はスクリーンでみるよりもずっと若々しく、そして知的でした。「深い内面演技のためには体と心の緊密な関係を維持する必要があり、外的そして内的な訓練を通じてせりふの中に隠された行動と意味を表現するのが演技である」といった演技理論を講義してくれました。予備知識のない素人にはちょっと難しかったかな。
その後、課題作品「バイラン」を鑑賞。私はすでに観ているので、今回はワキ(特にヤクザの親分役のソンビョンホとコンヒョンジン、キムヘゴンなど)に注目して鑑賞しました。
その後、チェミンシク登場!演技についての講義がありました。印象的だったのは、観客が息を抜くようなちょっとしたシーンはフィーリングで演じることもあるけど、重要なシーンになればなるほど計算する、と言ってたこと。あの渾身の演技はシナリオを読みつめて、監督とよく話し合い、演じるキャラクターの分析をとことんして生まれるとてもテクニカルなものなんですね。ご本人が最も好きだと言っていた課題作品「バイラン」のラスト、亡くなったバイランのビデオを見て涙しているチェミンシクの首を男が絞めるシーンでは、相手役の役者さんに数分では死なないから本当に首を絞めてくれとリクエストしたとか。確かにすごい迫力(特にその表情が)でした。
最後は参加者との質疑応答。私も「後で観て悔いが残るシーンはどこか?」と質問したのですが、「もちろんどの作品でも演技に100%満足することはない。悔いが残るシーンは沢山あるけど今は具体的に思い浮かばない、監督が別のテイクを採用する時もあるし・・・」とちょっとお茶を濁したような答えでした。具体例を挙げるのは差し障りがあるのかもしれません。
とにかく名優チェミンシクを間近(講義・質問の時は最前列に移動)で観ることができて話を直接聞けるとてもいい機会でした。彼のすごい役者魂に脱帽でした。
(人名の敬称は略しました)