リビュー141本目は2003年最大のヒット作、「殺人の追憶」です。日本公開の時に劇場で観ましたが、最近DVDを購入して観なおしました。これだけ鑑賞1回目と2回目で印象が違う作品は今までなかったです。
殺人の追憶
2003年作品
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン
【ストーリー】1986年に京畿道のある村で強姦殺人事件が発生する。その後、同じ手口の殺人事件が連続しておこる。警察では捜査本部が設けられ、ソウルからソ刑事(キムサンギョン)がやって来る。物証のほとんどないなかでパク刑事(ソンガンホ)とチョ刑事(キムレハ)は精神薄弱のグァンホ(パクノシク)を逮捕する。刑事としてのカンに頼り、証拠をでっち上げ、自白を強制する彼らを冷ややかな目で見つめるソ刑事。マスコミや村人が見守る中で行われた現場検証でグァンホは無実を叫びだし、でっち上げが明るみになってク班長(ピョンヒボン)は更迭される。新しく着任したシン班長(ソンジェホ)指揮の下、捜査を続ける彼らだが、手がかりがなかなかつかめないうちに新たな犠牲者が出る。
【感想】初め劇場でこの作品を観た時は、暗い映像、シリアスなストーリー、実話の重さ、未解決事件であるがゆえにオチのない結末にイマイチはまれませんでした。でもじっくり観なおしてみると、ポンジュノ監督の細部までこだわった演出や映像と、役者たちの渾身の演技に心をゆさぶられました。事件を捜査する刑事たちの憤りややるせなさ、悲しさ、空しさがひしひしと伝わってきます。冷静沈着なソ刑事が段々とあせりだし、終いには狂気を帯びる様子は、彼らの心情を最もよく具現化しています。科学データを信頼していた彼がデータで止めを刺されるクライマックスも印象的です。この連続殺人事件が実話を元にしているだけに、いっそう心が締め付けられますね。ソンガンホ、キムサンギョン、キムレハといった捜査班の刑事を演じた役者たちの演技も素晴らしいし、パクノシク、リュテホ、パクヘイルという3人の容疑者たちも舞台で鍛えた演技力でクセのある役どころを見事に演じきっています。特にパクヘイルは、ソンガンホが「この映画の主役は彼だ」と言ってるように、不敵なヒョンギュを印象的に演じています。オープニングとラストに出演する2人の子役(イジェウンとチョンインソン)もいい。シリアスな作品が苦手な人もいるでしょうから(万人におすすめ出来ないという意味で)おすすめ度は低めですが、韓国映画の傑作の1つだと思います。ポンジュノ監督の力量を改めて思い知りました。ラブコメもメロもいいけど、たまにはこんな骨太のシリアス作品もいいですよ。
【なあご的おすすめ度】 ★★★★
【おまけ】日本版DVD(2枚組)には200分を越す特典映像が収録されています。これがかなりのクォリティなので、予算に余裕のある方はぜひこのDVD購入(あるいは購入した人からの借用)をおすすめします。