リビューの133本目は日本でDVDがスルーで発売されている「緑の椅子」です。
緑の椅子(邦題:秘蜜)
2005年作品
監督:パク・チョルス
出演:ソ・ジョン、シム・ジホ
【ストーリー】離婚暦のある32歳のムニ(ソジョン)はふとしたきっかけでヒョン(シムジホ)と恋に落ちる。だか彼が19歳であったことから未成年者との性交渉の罪を問われる。100日間の社会奉仕活動という判決を受けて釈放されたムニは迎えにきたヒョンと数日を過ごした後、彼と別れる決心をして親友で陶芸家のスジン(オユノン)の家に身を寄せることにする。だが、彼女の家には別れたはずのヒョンがおり、3人の奇妙な同居が始まった。ムニは社会奉仕活動で痴呆症の老人の世話をすることになる。
【感想】「家族ゲーム」や「学生府君神位」のパクチョルス監督が実際にあった事件にインスパイヤーされて作った作品です。はじめは若者と年上女性の恋愛を赤裸々に描いた社会派のシリアス作品かと思いったのですが、話しが進むにつれてストーリーがファンタジックになってきます。特にラストのパーティシーンは色々な問題を提起しつつもうまく笑いのオブラートにくるんでいて、メルヘンチックな印象さえ受けます。主人公たちに対する社会の対応を声高に批判しているわけではないので、観終わった後の重さがありません。「秘蜜」という邦題にエロティックな印象を持つ人もいるでしょう。確かに前半の濡場は大胆です。でもそれだけではない、大人のメルヘンといってもいいようなロマンスで、非現実的であるとわかっていても、あんな恋素敵だなぁと思いました。
主演のソジョンは「魚と寝る女」や「蜘蛛の森」を観てミステリアスなイメージがあったのですが、本作品では三十路女の心の揺れをリアリティたっぷりに表現しています。自分が歳をとっていることに対する劣等感や若者の未来を台無しにしているのではないかとの罪悪感、いつか飽きられてしまうかもしれないという不安感を持ちつつも彼のことが好きで好きで嫉妬までする女の気持ちがよく伝わります。相手のシムジホは初めて見るのですが、若者の初々しさ、かわいさ、ひたむきさを歳のわりに落ち着いた演技で表現していて印象に残りました。すらりとした背と笑顔が魅力的で目力もある、今後が楽しみな役者さんです。2人を見守る親友役のユオノンの不思議な存在や2人を追う記者役のキムジョナン(実は本作の脚本家)の存在もユニーク。一風変わったラブストーリーとしてなかなの出来だと思います。日本のコリアンエロスファンをターゲットに発売されたのでしょうが、この作品がこんなに早く日本語字幕で観られるようになるとは、嬉しい限りです。
【なあご的おすすめ度】 ★★★