リビューの110本目は、2005年1月に封切られ520万人を動員する大ヒットとなった「マラソン」です。日本でも公開になったのでご覧になった方も多いでしょう。私も一時帰国でようやく観ることができました。
マラソン
2005年作品
監督:チョン・ユンチョル
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク
【ストーリー】自閉症児の息子チョウォン(チョスンウ)を抱え、その世話に明け暮れるギョンスク(キムミスク)の願いは、息子が自分よりも1日でも前に死ぬこと。彼の走ることに才能を見出した彼女は、そのトレーニングに情熱を傾けるようになる。20歳になったチョウォンのフルマラソン出場のために、彼女は元マラソンランナーで、今は飲酒運転のために200時間の社会奉仕活動を課せられているチョンウクに、息子のコーチを依頼する。自閉症児に対する接し方もわからなくて、初めはいやいやトレーニングをみていたチョンウクだが、次第にチョウォンの純粋さ、ひたむきさに惹かれ、真剣にコーチをするようになる。
【感想】いやぁ、まいりました。事前に感動作だと聞いて、ストーリーも想像がつくにもかかわらず、観終った後に感動で涙が止まりませんでした。吟味されたセリフ、演じる役者たちの高い演技力、そしてリアリティのある映像が一体となって、観客の心を揺さぶります。その訴えかけが、社会的弱者に対する差別や偏見を糾弾するような重いモノではなく(「オアシス」はその色彩が強いですよね)、素直な感動を呼ぶというか、登場人物をガンバレって応援したくなるような心温まるモノなんですよねぇ。
自閉症児という難しい役どころを圧倒的な演技力で演じたチョスンウ。最後のチョウォンの笑顔を見て、ああこの役はチョスンウにしか出来なかった役だなと思いました。「ラブストーリー」でもそうでしたが、あの笑顔に完全にノックアウトでした。障害児を抱えて苦悩する母親役のキムミスクの、内面的な表現も秀逸です。思わず彼女に感情移入し泣いてしまいました。現実逃避する夫のアンネサンはともすれば悪者に見られがちな役にもかかわらず、それもわかるなぁと観客に思わせる説得力のある演技を披露しています。彼はキムミスクよりもかなり年下なので(しかも若く見える)夫婦として釣り合いが取れるのかなぁと当初は思っていたのですが、そこは落ち着いた演技でしっくりとまとめています。もしかしたらチョウォンはキムミスクの連れ子?なんて想像もちらと頭をよぎりましたが。コーチ役のイギヨンもチョウォンの弟役のペクソンヒョンも申し分なし。
実話をもとにしてあるためストーリーに説得力がある反面、事実という縛りがあるので、感動的なストーリーにするために苦労したのかもしれませんが、細かいエピソードの一つ一つに現実味があり、それでいて感動できる素晴らしい作品に仕上がっています。まだご覧になっていない方はぜひ観て下さい。
【なあご的おすすめ度】 ★★★★