リビュー92本目は「イルマーレ」のイヒョンスン監督のデビュー作、「君の中のブルー」です。「韓国ムービースターLIVE②」という雑誌に日本語字幕付きのものが付録としてして付いてます。
君の中のブルー
1992年作品
監督:イ・ヒョンスン
出演:アン・ソンギ、カン・スヨン
【ストーリー】仕事と家庭の両立に失敗して専業主婦となったユリム(カンスヨン)にイタリアにいるホソク(アンソンギ)からビデオが届く。それは彼と出会ってから彼女が辿ってきた過程を撮ったものだった。数年前、ウエディングドレスのまま結婚式を逃げ出したユリムはディスプレーデザイナーのホソクに拾われる。紆余曲折を経て彼の下でで働くことになったユリムだが、彼は「愛なんて信じない、結婚は女性を犠牲にする」と公言してはばからない生粋のフェミニストだった。クライアントと意見が合わずに仕事をしたがらない彼に代わってユリムはスポーツメーカーのディスプレイを引き受ける。初めは手伝わないと言っていたホソクの協力も取り付けて、ディスプレイは成功する。そんなユリムにホソクはイタリア行きを提案する。
【感想】「イルマーレ」でお馴染みのイヒョンスン監督のデビュー作。大学で美術を専攻していただけあって、色の使い方は見事です。登場人物の感情を色で表していて、ブルーは「愛という言葉の影に隠れた悪魔の色」、白は夢、黄色は幻想(ユリムにとっては恋)の色。ただ、本作のビビッドな色調は今見ると古臭く感じられます。「イルマーレ」が抑えた色調で都会的な雰囲気をかもし出していたのと対照的です。登場する女性の化粧の濃さやファッションもそうだし、女性の自立を声高に主張している点もどこか古臭い。まあ、10年以上前の作品だからね。アンソンギ先生はちょっと難解な男の役をクールに演じています。カンスヨンも自立に悩む女性を等身大に表現しています。全裸で踊るシーンがあるのですが、そのプロポーションの良さにホレボレしました。ストーリーはユリムのホソクとの葛藤と、それを通して最終的に自立を目指す姿を描いたものですが、愛なんて幻想で仕事をするのなら家庭や家事を捨てるべきと考え、そんな自立した女性を育てようとするホソクにも、愛を信じて結婚と仕事の両立を図ったが失敗して家庭に入ったものの、その後あっさりと家庭を捨てて仕事に生きるようになるユリムにも感情移入ができませんでした。恋を切り捨てないと仕事の成功は得られないのかなぁ。わたし的にはイマイチだった本作ですが、公開当時は、韓国初のフェミニズム映画として話題になったそうで、監督は青龍賞新人監督賞を受賞しています。
【なあご的おすすめ度】 ★☆