リビューその70は、なんと、私のニガテなキムキドク監督の代表作「悪い男」にしました。だからちょっと辛口です。キムキドクファンの方には悪いんですけど。
悪い男
2001年作品
監督:キム・キドク
出演:チョ・ジェヒョン、ソ・ウォン
【ストーリー】売春街をねぐらにするチンピラのハンギ(チョジェヒョン)は、ある日、若さはじける美しい女子大生のソナ(ソウォン)に心を奪われる。用心深くソナに近寄るハンギだったが、彼女からは完全に無視され、ハンギは腹いせにソナに無理やりキスをする。ソナの彼氏や通りかかりの兵士らに袋叩きに合い、ソナからツバをはきつけられたハンギは、報復のために策略を用いてソナに莫大な借金を背負わせ、売春婦に転落させる。夜ごとマジックミラー越しにソナの様子を覗くハンギ。その後、ハンギの手下のミョンスがソナに惚れて、ハンギがソナを陥れたことを暴露してしまう。ソナは怒りを爆発させる。だが、その怒りと憎しみは次第に別の方向へと変化していく。
【感想】人によって評価がくっきり分かれる問題作。ある人は崇高な愛を描いた傑作だと絶賛し、またある人は意味がわからないという。私は残念ながら後者です。こんな愛の形もあるのかと感動するより、こんな異常な愛を描いてどこが面白いの?と思ってしまいます。キムキドク監督の作品は「悪い女(原題:青い門)」や「コーストガード」も観たのですが、彼の描く女性って、みんなかわいそうで、受身に生きているんですよね。でも女って男にDependentな生き物なの?現代社会においては男に頼らなくても前向きに生きてる女性はいくらでもいるじゃん。そういう意味で、監督の女性観に時代錯誤を感じてしまいます。本作のソナだって売春婦にさせられる前にそれを阻止する手段はいくらでもあったでしょうに。何も知らない小娘ではなく、教養のある大学生なんだから。だからソナに感情移入できないんです。だいいち、人身売買の誓約書や足抜け出来ない売春宿なんて、イマドキちょっと非現実的です。監督はどうしてそう異常な愛ばかり描くのかな。まあ、それがキムキドク監督のスペシャリティで、それが私のツボと違うだけなんですけどね。ただ、ストーリーテラーとして観客を作品にぐいぐい引き込む力量はさすがです。チョジェヒョンの、ほとんどセリフがないにもかかわらずその表情で観客を納得させる演技は秀逸。かげりのない普通の女子大生が売春婦に転落していく姿を表現したソウォンの演技もすばらしい。でもなんだかんだ言っても、私、観終わってから考え込んじゃうような映画って好きじゃないんです。観終わってから、胸がスカーッとするとか、暖かくなるとか、つまり、元気になれる、そんな映画が好きな方にはおすすめしません。
【なあご的おすすめ度】 ★★