今回のソウル訪問の一番の目的は芝居を観ることでした。あまり韓国映画がやってないということもあって、芝居は全部で6本も観ました。タイミング良くソウルに居た友人に押さえてもらった1本を除いてはチケットは全て現地調達。ソウル入りした翌朝真っ先にしたのは、教保文庫(光化門にある大きな本屋)のチケット売り場に行ってチケットを買うことでした。でも当日や翌日の公演チケットはそこでは買えなくて、上演当日に劇場に並んで買ったのもありました。チケットが既に売り切れていた作品を含めて、観たかった作品は全てみられたのでラッキーでした。
で、その感想を2回に分けてUPしますね。
「リタの教育」
場所:トンスンアートセンター(大学路)
出演:ユン・ジュサン、チェ・ファンジョン
感想:
チョジェヒョンが総合プログラマーを務める“演劇熱戦2”という演劇シリーズのうちの1つ。ウイリーラッセル作の翻訳劇で、17年前に初演されたものを、同じキャストで再演しています。
舞台はイギリス。詩人で大学教授のフランクの元に社会人講座の受講生として美容師のリタが訪ねて来るところから始まります。スッパなリタが教養を身につけてどんどん洗練されていき、その一方でフランクは変わって行くリタをうらやましくそしてちょっと妬ましく思うようになる。ラストがエスプリが効いていてオシャレでした。リタはヨン様ドラマ「ホテリア」でヒロイン・ジニョンの同僚をコミカルに演じていたチェファンジョン。リタの成長を服装(10回くらい衣装替え)だけでなく、コトバや物腰で表現してるのが素晴らしかったです。17年前と同じ役ということは実年齢よりも1回り以上年下を演じている訳で、そのプレッシャーもあったでしょうがとてもキュートでした。フランクは映画「ガン&トークス」の叔父さん役でもお馴染みのユンジュサン。初めは疎ましく思っていたリタに親愛の情を抱くようになり、次第に変わっていく彼女を時にまぶしく時に妬ましく感じるフランクを繊細に演じていました。酔っ払い演技もオーバーアクションでないのでリアルでした。もちろんその透る声にもうっとりでした(笑)。
日本でも 1997年に有川博・富本牧子主演で上演されており、シナリオ本が出ています。今回事前にその本で予習していき、上演中も本を開いて個々のセリフを確認しながら鑑賞したので、韓国人観客と一緒に笑えました。
「老いた泥棒の話」
場所:ワンダースペース丸劇場(大学路)
出演:パク・チョルミン、パク・ギルス、
チェ・ドンムン
感想:
同じく“演劇熱戦2”の人気演目。昨年から再演を繰り返し、とうとうオープンラン(終了期日未定のロングラン)になってしまいました。私は昨年5月に続いて2回目の鑑賞。美術館に忍び込んだ決して若くない泥棒2人と彼らを取り調べる警察官の計3人によるコメディ。観客にリピーターが多く笑いどころを押さえているので、役者と観客が一体となって盛り上がります。役者による“観客いじり”も沢山。お芝居なんだけどアドリブも多く、まるでショウみたいな感じです。コトバだけで笑わせるコメディではないので、韓国語がわからない人にも楽しめると思います。
会場のワンダースペース丸劇場は、舞台と客席の距離が短いんです。映画やドラマでお馴染みの役者たちを、手を伸ばせば届くくらいの距離でナマで見られたのは感動モノでした。特に捜査官役のチェドンムンのナマ腹やナマ尻を至近距離で堪能しました(でも私はオチなかったよん)。
「神のアグネス」
場所:チョンミソ劇場(大学路)
出演:ユン・ソクファ、チ・ヨンラン、
チョン・ミド
感想:
アメリカの人気脚本家ジーン・パイエルマイヤーの作品で、1982年にブロードウエイで初演。1985年にはジェーン・フォンダ主演で映画化もされています。韓国では1983年に初演。当時修道女アグネスを演じて人気を博したユンソクファが25年後に今度はDr.リビングストーンを演じるということで話題になっていました(正式なタイトルも“ユンソクファの神のアグネス”)。でも私のお目当ては役者ではなく、演出のハンジスン。「ゴーストマンマ」、「エンジェルスノー」、「けんか」、ドラマ「恋愛時代」でお馴染みの監督の舞台初演出でした。
男子禁制の修道院で子供を生んだ若い修道女アグネス。産み落とされた子供は首を絞められてゴミ箱に捨てられていた。アグネスの精神鑑定のために派遣されたDr.リビングストーンはアグネスと院長を問い詰める。子供を生んだことすら覚えていないアグネスにDr.リビングストーンは催眠療法を試みる。
舞台にイスがあるだけのセット。場面転換もなし。つまりビジュアルでなくセリフで観客をひっぱるストレートプレイ。韓国語がほとんどわからない私は、事前にストーリーをチェックしていましたが、心理劇はやはりセリフがわからないとキツイですねぇ。役者達が熱演してるのはわかるのですが、個々のセリフがわからないと心を揺さぶられないんですよ。ちょっともったいなかったです。
余談ですが、ユンソクファがアグネスを演じた25年前の初演時にDr.リビングストーンを演じていた女優さん(だれだかわからず)が客席にいて、芝居終了後のユンソクファの挨拶でスペシャルメンションされていました。